明日の未来(リアル)2
□第二話「出来事」
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池袋駅から5分歩いたところにある雑居ビル。そのビルの二階に【麻倉探偵事務所池袋支部】がある。
三紗子はそこの支部長としてを勤めている。
喫茶店からは目と鼻の先にある。
階段を上がり、事務所のドアを開けた。
「ただいまー」
「あ、お帰りなさ…きゃ!?」
三紗子の目の前でいきなり大量の紙が中を舞う。
呆然とする三紗子。
目の前には大量の紙の下敷きになっている水城 真希(ミズキ マキ)がいた。
「何やっているの…」
「ご、ごめんなさい…、ちょっと整理しようかなって思って…」
ため息を付く三紗子。
真希はこの事務所のアルバイトをしている。
ある事件で知り合い、それ以来、三紗子の事務所に毎日来るようになった。
「あれ、今日学校じゃあないの?平日よ」
真希は池袋から程近い、池袋北高等学校に通っている。この近くでは一番の名門高校であり、エリートがたくさん集まる学校である。
真希もそこそこ勉強が出来る学生である。
「今日は臨時で休みになったんですよ」
「休み…?珍しいわね」
三紗子が考える素振りをすると、真希がぐっと近づいてきた。
「おかしいですよね!?絶対、事件の匂いがしますよ!」
…うわーでた、真希の“事件の匂いがする発言”…
この発言のせいで私がどれほど振り回されてきたか…、
三紗子は心の中でそう思った。でも、あながち間違いではない時もある。
…真希の発言の陰に事件アリ…
一時期、三紗子の頭の中でその言葉が浮かんでいた。
今回もそうならないよう祈りたい、三紗子はそう思っていた。
「とりあえず、早く片付けるよ」
「はーい」
…10分後…
なかなか片付かない…。
その前にこんなに書類があっただろうか…、
ふと一枚の用紙を手に取った。
びっしりと文字で埋められた用紙。内容は三紗子には見覚えのない調査内容だった。
「ねえ、真希ちゃん」
「はい?」
「私がいない間、誰か来た?」
そう聞くと、真希の片付けている手が止まった。
「え!?、えっと、だ、誰も来ていませんよ?」
笑ってごまかそうとする真希。相変わらず、嘘が下手。
三紗子は携帯を取り出し、ある人に電話をかけた。
しばらく呼び出し音が続く。
「『はい、…こちら麻倉探偵事務所…』」
寝ぼけた声が三紗子の耳に聞こえてきた。
「疲れてるみたいですね、…お兄さん」
「『うわっ!三紗子!?』」
すると、電話口から大きな雑音が聞こえてきた。
電話口から聞く限り、おそらく椅子かベットから落ちた、そんな音がした。
「『痛っ!…イッテー…』」
「まったく、何やっているの、兄さん」
ため息をつく三紗子に対し、真希はただおどおどしていた。
「この世を壊すって…どうやって?」
顔を上げ、伸也の方を見る悠美。
伸也は携帯を取り出し、悠美に画面を見せた。
「これをよく見て…、目をそらさずに…」
画面には何かの映像が流れていた。
水中…、森林…、街…、人ごみ…、
それらの映像が繰り返されていく。
すると、だんだん全身の力が抜けていった…;。まるで自分が中に浮いているかのように、体が軽くなっていき、それと同時に、意識も徐々に遠くなっていく…。
「し、伸…也…、わ…たし…」
「大丈夫だ、そのまま…そのままでいいから…」
「伸…也…、…」
「俺と一緒に…、この世を壊そう…!!」
悠美はそのまま目を閉じた。
駅のホームに座っている城ヶ崎と“ライナー”という男。
「ライナー、お前に頼みがある」
城ヶ崎は前を向いたままライナーに話しかける。
ライナーも前を向いたまま城ヶ崎の言葉に答えた。
「なんでしょうか?」
「あのシステムを…壊してくれないだろうか?」
「あのシステム?、一体何のことでしょうか?」
ライナーの態度に城ヶ崎の表情が険しくなっていく。
「とぼけるな!、お前が作ったあのシステムだ!、もしかしたら、今日、使われるかもしれないんだ…!」
城ヶ崎の言葉に何も反応しないライナー。
ライナーはただ前を向いたまま、通り過ぎる電車や人の流れを見ていた。
「私からは、城ヶ崎さんにお伝えすることは何も言いません。ただ…」
そう言って立ち上がり、初めて城ヶ崎の顔を見る。城ヶ崎もライナーの顔を見た。まるで自分が見下されているかのように…。
「これから起きることは…、城ヶ崎さん、あなたにかかっているんですよ」
「俺…だと?」
「城ヶ崎さん、あなたも…愚かな人にならないよう、気を付けてください」
ライナーは言い終わると、人の流れに乗るようにその場から立ち去った。
城ヶ崎は去っていくライナーの後ろ姿をただ睨みつけるしかなかった。
「…ふざけるな!、俺は…俺の道を進むまでだ…!」