Truth Samsara

□君が笑ったその先で
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「仁王くんおはようございます」


ベッドに埋もれる彼に声をかけてそっと髪に指を通せば途中で引っかかる。相変わらずの癖っ毛だ、と柳生は微笑んだ。


「…ん、やぎゅー…?」


ええ、私です、と答えればふるりと髪と同じ銀の長い睫が震え、ゆっくりと瞼が持ち上がる。
窓からの光が眩しいのかすぐに細められた目は、柳生の姿を捕らえた。


「体の具合はいかがです?」

「…だいじょーぶ、ナリ」


ふにゃ、と笑顔を見せる彼に安堵の息をはいてから、柳生は仁王の体を支え起こした。


(…細い、ですね)


今更のことに顔をしかめるも仁王に着替えを渡して「着替えていてくださいね」と部屋を後にするため立ち上がる。


「やぎゅー」

「はい?」

「着替えさせてくれないんか?」


見れば仁王は先ほどとは違うニヤリとした笑みを浮かべていた。
ああもう、またからかわれている。


「自分のその笑い顔を鏡で見てからいってください…」

「…プリッ」

「ジャッカルくん達に朝食頼んできますから」

「ああ。待っとる、…は、早くきて、な…」


後半部分は俯いてしまったためわからないがきっと仁王の顔は真っ赤だろう。
柳生はふふ、と小さく笑えば「わかりました」と言いながら仁王近づき、その額に唇を落とす。 


「っ!!!し、死ね!!」


柳生には真っ赤になって自分の胸を押し返す仁王が可愛くて愛しくて、


悲しくてたまらなかった。





「おはよう仁王」

「仁王か、おはよう」

「幸村、真田、おはよ。あ、幸村、ここに土ついとるよ」

「え?さっきまで花壇にいたから…、恥ずかしいな」


仁王が柳生を無視して、一階に降りてくれば小さな村にあり‘立海’とよばれる屋敷に住んでいる全員がそろっていた。


「ていうかなんで俺と一緒にいたのに気がつかないんだよ真田」

「い、いや、俺と幸村は今あったばかりではないか!!」

「真田うるさい」

「精一、いつもながらに理不尽だな」

「あ、参謀、おはよ」


真田がお馴染みの叫び声をあげそうになったとき、柳が座っているソファから声をかけてきた。
ちなみに柳の膝では一番年下の赤也が寝ている。というか膝枕。


「おはよう仁王、今日は起きれるのか?」

「ん。今日は大丈夫ナリ」

「そうか無理はするなよ」


薄く微笑む柳はとても綺麗なのだが、赤也が膝にいるのでなんとなくきまらない。


「その格好で言われてもね…」


仁王の思ったことを幸村が代弁してくれたようだ。
その言葉に柳は、はっとしたような表情になり(わかりにくいが)赤也の頬を抓った。


「んー…」

「赤也、そろそろ起きろ」

「いやっす…きもちいー…」


うにゃうにゃと赤也は何か言っているが起きようとしない。
ていうか今まで赤也のこと忘れてただろ、と幸村が小さく呟いたのが仁王には聞こえた。


「うぉーい!飯できたー!」

「マジっすか!?」

「ごふっ」


ブン太の声に赤也が思い切り顔をあげる。
そして当然の如く柳の顎に赤也の石頭がぶつかった。


「いやー、いい音したのぅ」

「あ!仁王先輩っ!」


悶絶する柳と心配する真田、笑いを堪える幸村を気にせず赤也は仁王に飛びついてきた。


「具合大丈夫なんすか!?仁王先輩良い匂いする!」

「ちょ、赤也、やめ、髪がくすぐったい!」

「なっ!!!私の仁王くんに何してるんですか!!」

「やぎゅー、俺はお前のじゃなか…」

「精一、笑いすぎだ」

「だって顎、赤いし…ぶはっ!」

「いつまでじゃれてんだよ!飯冷めるだろぃ!!温め直すの大変なんだよ、ジャッカルが!」

「俺かよっ!!なんでだ!お前もやれ!」

「静かにせんかあああああ!!」




ただ、これが日常だった。

そう思っていた、

思っていたのは、思っているのは

俺だけだった。


何も知らなかったのは俺だけだった。



(「仁王が笑っていてくれたらそれで良い」)
(そんな声が聞こえた気が、したんだ)


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