その男、人でなし

□第6箱『信用してなきゃ』
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「えーっと。昨日ボクシング部行ったから……格闘技系はこれでコンプリートか」


……最近の善吉っちゃんはどうしたのか。

現在、俺と善吉っちゃん、袖、そして日向くんの4人で昼食を取っている。
何で日向くんも一緒にいるのかはこの際気にしないでおこう。



「お前どうしてそんなあちこちで暴れてんだ? そんなスポーツ好きだったっけ?」



そうそう。最近の善吉っちゃんは色々な部活に体験に行っては暴れての繰り返し。
一体何がしたいのやら。



「別に。ただ俺の中のルールでな、一日五リットルの汗をかくって決めてんだ」



嘘だな。それだけが理由じゃないくせに。



「あーわかるわかる。あたしも一日五リットルのラーメンを飲むって決めてるし」

「不知火。ラーメンはドリンクじゃない」



さっきからズズズズうるさいと思ってたけど原因は袖か。……せめて顔は浸けずに飲めよ。
それに「似たようなもんだよね♪」とか言ってるけど何も似てないから。



「シーザーサラダって、野菜ジュースだと思うんだよねー♪」

「ま、それくらいしないとあの黒神(バケモン)には付き合いきれないってのはわかるけど、もうやめといた方がいいかもな」



無視した! 日向くんが無視した!!



「お前噂になってるぜ。生徒会の『部活荒らし』だとよ」



『部活荒らし』か。
名前は聞いたことあるけどダッセェ名前だなって思ったからちゃんと知らなかったんだよね。
まさか善吉っちゃんのことだったとは。
と思ってたら善吉っちゃんが日向くんを見つめはじめた。
え、なに。いつからそんな関係?



「なに。お前、俺のこと心配してくれんの?」

「バッ、お前の心配じゃねーよ!!」



赤い顔をして否定する日向くん。
何だ、君もツンデレなのか? 何だこのツンデレ率。
善吉っちゃん然り日向くん然り。多分だけど諫早先輩もそうだと思うんだよね。



「いーんだよ。こちとら最初から名前を売るつもりでやってんだから」



こら善吉っちゃん。「お前なに仲間みたいな顔して一緒にごはん食べてんだよ」とか言わないの、俺だって気になってるんだから。
せめて呟かないではっきり聞いてよ。



「カッ! しかし『部活荒らし』か。()()()()()()ームじゃ少し弱いな(・・・・・・・・・)



……あぁ、この顔。
もしかしなくても善吉っちゃん、まためだかちゃんのために動いてるな。
ホンット、めだかちゃん相手に何でそこまで頑張れるんだろうねえ。



「名前を売りたいのかい? 人吉クン」



善吉っちゃんの言葉を聞きつけたのか、そんなセリフが聞こえてきた。

うわ……この声は。



「鹿屋……先輩」



やっぱり。名前だけ出ててやっと登場した鹿屋(かのや)必修(ひっしゅう)先輩だ。
いつ見ても悪人ヅラだ。



「ちょいと(つら)貸してくれや人吉クン。相談に乗ってほしいんだよ。なぁーに、人吉クンにとっても悪い話じゃねーと思うぜ?」



相談ねえ?
相談というか、勧誘の間違いでしょ。

最近、一部の生徒によってある計画が立てられている。
その名も『黒神めだか襲撃計画』。発案者は何を隠そうこの鹿屋先輩だ。
確か、めだかちゃんに制裁されたのを恨んで下剋上するつもりなんだったかな。

その計画に善吉っちゃんも加えようって腹づもりなんだろう。
傍から見れば善吉っちゃんはバケモノ女のパシリにされてる可哀想な幼なじみに見えなくもないし、鹿屋先輩もそう思ってるんだとしたらその可能性は十分にある。
最近の部活荒らしの件もストレス解消法だとか生徒会辞退の意思表示だとか思われても不思議じゃないし。

でも、アンタは何もわかっちゃいないよ鹿屋先輩。


善吉っちゃんの『なりたいもの』は、そんなところにない。


って、あれ。善吉っちゃん着いてくんだ。
そういえばこれ教えてなかったっけ? そりゃ知らないか。
多分知ってても行っただろうけど。



「行ってらっしゃーい」



そう声をかけて、善吉っちゃん達を見送った。


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