短い夢

□白木の椅子に秘するおもい
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『……さ…ま…、ひめさま…ひめさま…』

月が煌々と輝く夜、自室で休んでいた珠翠を小さな小さな子供の声が呼ぶ。

「誰なの?」
人の気配はない。
頭の中に直接響く幼き声。
『こちらです、ひめさま』
瞳を閉じて声のする場所を探す。

その声の意思は棺の間で強く感じる。
誰だかはわからないけれど呼ばれているのだから行くしかない。

「棺の間ね。今行くわ」
『おまちしております、ひめさま』
「少し待ってて」

言い終わるのと同時に室から珠翠がかき消えた。
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