短い夢
□君思い、春を待つ
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『…私は…あなたに春を連れてくることは出来ません。どんなに連れていきたくても』
泣くじゃくる自分に悠瞬は唇を戦慄かせ凛の名前を呼びながらぽつりとつぶやいた。
「あなたが連れてこれないなら、私が春を連れてきます。それまで待っていてくださいますか? 少し遅くなるかもしれませんが必ず…」
泣き疲れて眠る妻の頭を撫でていた手を静かにおろし卓子に向かう。
さらさらと文をしたため文箱の一番下に忍ばすと寝台の中にもぐりこみ凛を抱き寄せ瞳を閉じる。
夜明けのこない、しんしんとした永遠のような暗闇の中で……