*狼Alice*

□*お友達?
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「はぁ・・・」




思わず漏れたため息。




この春に大学入学を控え、今まで貯めていた貯金で一人暮らしを考えていたのだが。




「ちょーっと、きついんだよなぁ・・・」





実家から少し離れた大学を選んだので、一人暮らしの資金にとコツコツ貯めてはいたのだが、


・・・正直、足りない。





優妃は物件を探すのに疲れて、少し街を散策することにした。





「これからこの街で、大学に通って、友達と買い物したり・・・」




これから始まる大学生活を想像しながら。


優妃はわくわくしながら街を眺めていた。





「恋、も・・・しちゃったり、なんて」






その時突然、




ビュウッ_____




と、強い風がふいて、優妃の持っていた大学の書類が飛ばされてしまった。





「わっ!」





慌てて駆け寄り拾い集めていると、
誰かがスッ、と散らばった紙の一枚を拾い上げた。





「すいません、それ、私のなんで、す・・・」





お礼を言おうと見上げた優妃は、思わず目を奪われてしまう。






(わ・・・!す、すっごい美少女!!!)






そうなのだ。


紙を拾い上げまじまじと見ているのは、何と言うか・・・



絵に描いたように整った顔立ちの、
おそらく優妃と同じくらいの歳の美少女だった。





背は優妃より少し高く、手足がすらっと長い。



色白で、くっきりとした目鼻立ち。


薄く形の整ったピンクの唇。



すっと通った鼻筋に、長い睫毛が印象的だ。




髪はウェーブのかかったミディアムロングで、明るいベージュ。



レースがあしらわれたパステルブルーのワンピースを着ているその姿は、

まるで昔絵本で読んだ「不思議の国のアリス」のようだ。






(すごい可愛い・・・お人形さんみたい)






見上げたまま見とれていると、彼女がにっこりと微笑んで書類を手渡してくれた。





「・・あっ、ありがとうございます!」


「大丈夫ですよ。

・・・あの、失礼ですけど、春霞大学に通ってらっしゃるんですか?」





(こっ・・・声もかわいーーー!!)





「はい!・・って言ってもこの春入学するんですけど」


「そうなんですか!?

実はわたしもこの春から春霞大学に通うんです!」


「ええっ!!」





(まさかの同じ大学!!)





「わたし、この辺あんまり知らなくて。

同じ大学の、しかも同学年の人に出会えるなんて嬉しいっ」





彼女はすごく嬉しそうだ。



・・・それにしても、本当に可愛いと思う。

ハーフみたいだ。





「名前、教えてもらってもいい?」


「優妃だよ!」


「優妃ちゃんかぁ、可愛い名前だね!

わたしは有栖。ありすって呼んでね」




(ま、まさかまさかのアリスちゃん・・・!!)




似ているとは思ったが、まさか本当に名前までアリスとは。


名前負けしない人ってほんとにいるんだなぁ・・・。





「じゃあ、私のことも優妃って呼んでね!」


「よろしくね、優妃」





そんなわけで、思いがけず私にとびきり美少女の友達ができた。



大学に入る前に友達ができるなんてラッキー!













近くにあった公園のベンチに座って大学のことやお互いのことを話しているうち、

有栖と優妃は今日初めてできた友達とは思えないほど打ち解けていった。






話を聞くと、有栖も実家から大学が離れていて、ルームシェアを考えているという。






「ルームシェア、かぁ。
考えたことなかったなー」



「・・・ねぇ優妃、よかったら、
わたしと二人でルームシェアするのはどう?」





それは有栖からの思いがけない提案だった。






でも確かに、一人暮らしよりルームシェアなら家賃も安いし、家事も分担してできるし・・・。


それに有栖はこの春から同じ大学に通う友達。





有栖と共同の暮らしを想像して、優妃はわくわくしてきた。







「・・・それ、いいかも!!」







有栖は今日知り合ったばかりの友達だが、すごくいい子だと思う。




同じ大学で同じ学年で、優妃と同じく新居を探している。







それに優妃は、話しているうちにどんどん有栖が好きになってきていた。




まるで昔からの親友みたいに、話していて安心するし、楽しい。






(そして何より、かわいい!!)





かわいい子に悪い子はいないよ。うん。


































優妃はこのときの自分の判断を、
あとで激しく後悔することになる。










それは、また、次のお話。










それから程なくして、有栖と優妃のル
ームシェア生活が始まる。

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