キリリク小説
□1111番 土沖 甘々?
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「おめーら、俺は仕事だからもういくぞ。総悟、待たせ…」
総悟が居た場所には誰も居なかった。
「総悟…?」
「ハァハァ…」
団子屋からなるべく目立たない様に走って逃げてしまった。
大通りから一本入った裏路地を全力で走る。
土方さんが花街に通うのは俺に負担をかけない様にする為なのは知っている。
やはり、セックスの次の日は足腰が立たずに仕事が辛い日も少なくは無かった。
でも、土方さんが花街に行く事が嫌だと素直じゃない俺は言えない。
いつも『勝手に行けばいいじゃないですか?』とか、『こっちも仕事に支障が出るので、毎晩部屋にこないで花街にでも行って変な病気移されて早く副長の座を俺に下さい。』など、今思えば、可愛くない事ばかり我ながら言っている。
ズルっ!
「うわっ!」
余計な事ばかりを考えていた俺は、地面に散らかっていた雑誌の束に足を取られ派手に転倒してしまった。
地面に思いっきり尻餅を着いてしまいぶつけた部分がジンジンと痛んだ。
立ち上がる気力がでずに、座り込んだまま空を仰ぐ。
高いビルとビルに切り取られた青い空をボンヤリと眺める。
頭の隅でさっきの光景を思い出す。
『姉様も土方様に逢いたくて逢いたくて毎日待っておられますよ。』
心が締め付けられる。
土方さんは廓では一体どんな顔をして女をだいているのだろうか…俺の知らない土方さんがいる事自体に心が痛んだ。
俺は身を小さくしてその場に蹲った。
「総悟!」
顔をあげると土方さんが目の前に立っていた。
「こんなきたねー所でなにしてるんだよ。」
そう言って立ち上がらせ様と伸びてきた手を俺は弾き返していた。
「総悟?」
「あ…、土方さん、すいやせん。一人で立てますんで…」
「なんで急に居なくなったんだ。心配さかたんだぞ!」
少しきつめの口調で窘められる。