キライだよ。

2話 キライの始まり
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アカデミーに入学し、ざわざわと騒がしい教室の中に以前にも感じたことのある気を感じた。

誰の気だ?

キョロキョロと周りを見渡すと、何人もの頭の間に金色がチラリと見えた。

金髪!もしかして。

少し場所を変えて違う角度からそいつを見てみると、机に突っ伏して寝ている?

開け放たれた窓からスイっと風が入り、金髪がフワフワと揺れる。

ああ。あの柔らかそうな金髪はあいつに間違いない。それにゴーグルもはめている。


そいつの名前は「うずまきナルト」。


一緒に勉強をしてわかったのは、そいつことナルトは非常にドンくさく、かつ、出来が悪いということ。

それには、教師陣の冷たい仕打ちなど他の要因もあったが、ナルトから抗議をしなければ、誰が言う?

誰も言わない。

そんな状況に出くわす度にイラッとするが、じゃあオレがどうにかしてやろう、という気にもならない。

自分で言わないものを何でオレが言う。めんどくせぇ。

その反動か、火影に叱られるほどのイタズラをやってのけるナルト。

ギャップありすぎだろ。

益々、目が離せなくなり、毎日見ていて気づいたことが一つ。


その、ゴーグルの使い道がわかっちまった。


理不尽なことをされた後、堪えきれなくなった涙を人に見られない為に目を隠すんだ。

口を引き結んで、でも、何もなかったように振る舞う。

負けん気が強いんだよな。

何でこんなに気になるのかは分からないが、初めて金髪を見た時に思ったことは正解だった。

陽の下で見るナルトの金髪は、キラキラとキレイで光の当たり具合によって何色にも変わる宝石のようだ。

青い瞳は、深く透き通っていてどこまでも続く海のようだった。

それだけでも自慢になりそうなのに、ナルトは容姿のことは口に出さない。

目立つ容姿なのに、極力目立たないようにする。

それはたぶん、大人からのナルトへの扱いに問題があるのでは?とオレは思っている。


オレら子どもが踏み込めない部分。

イラッとするが、仕方がない。


あ〜、もう一つ。気づいたことがあった。

あいつ、オレのこと全然覚えていなかった。

無理もねぇけどよ。声を掛けたのは一回きりだし、面と顔を合わせたのも一回きりだ。

だけど、あいつ、いつも公園を覗いていたんだろ?

オレが覚えていて、何で、あいつが覚えていないんだよ。

ナルトに初めて会った素振りをされて、そうくると何も言えねぇじゃん。

オレだけ覚えてるってバカみてぇ。

チッ。またイライラする。

ま。別にいいけどよ。


クラスの中で自然とグループが出来て、オレらとナルトは悪ガキのイタズラグループ。

一緒のグループだからといっても、オレとナルトが仲がいいわけでもねぇ。

ナルトと仲がいいのは主にキバとチョウジ。

オレとは、何ていうのか向こうが一線を引いている感じだ。だから、進んで話しかけないし話しかけられることもない。他の奴に話を振られて話す程度。

いわゆる友達の友達って奴?

でも、それって友達って言えるのか?

アカデミーではずっとそんなスタンスのままだ。

ナルトという存在が近くにいて、自然とナルトについて耳にすることが多くなる。

例えば、大人がよく口にする「化け狐」。

オレなりに色々調べてみたが、九尾事件に関してナルトは何にもちっともわるくねぇ。それなのに、里人からは疎まれているようで。

「あっちへ行け!」など、とうてい子どもに接する態度ではない扱いを受けている。

親を亡くしているのに、今までどうやって暮らしてきたのか不思議でしょうがない。

このアカデミーにはオレらより早く入学していたから、オレとナルトがあの公園で会った時にはアカデミーにいたことになる。


おまえ、その頃から一人だったのか?


また、イラッとする。

そんな中で、教師のイルカがナルトに親身に接するようになり、ナルトはオレらといない時は大抵イルカに引っ付いていた。

イルカと一緒にいるナルトを見ると、大人と一緒にいることで得られる安心感というものを初めて知ったような態度でじゃれつき甘えていた。

そりゃあ、ナルトがオレらと同じ歳なのに一人で暮らしてるとか聞いちまうと、イルカに見せる態度も頷けるが。

な〜んか。おもしろくねぇ。

なんでだろうな?あいつから目が離せないのに、考え出すとイラつくばかりだ。

あ〜。めんどくせぇ。

本当にめんどくせぇ。


 
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