キライだよ。

4話 キライと苦手
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アカデミーを無事卒業し、下忍となったオレ達。

それぞれ三人ずつ班に振り分けられて、オレはアスマ率いる第十班。オレとチョウジといのの三人。

ナルトはカカシ率いる第七班で、ナルトとサスケとサクラ。

ナルトと仲の良かったキバは、紅率いる第八班。キバとシノとヒナタの三人だ。

偶然というのか、それぞれの上忍師が知り合い同士で仲が良く、何かというと三つの班で合同任務が行われた。

まあ、下忍になりたての任務といったら、草むしりや大掃除と人手のいる仕事が多いため、合同での任務になりがちだ。

ただ、オレとしては、アカデミーを卒業したらナルトに会う機会は極端に減るもんだと思ってた。それが、ほぼ毎日顔を合わすことになるなんてよ、アカデミーの時と変わらねぇ。


ま、オレとナルトの距離も変わらねぇけどよ。


相変わらず、ナルトからはオレに話しかけてこない。オレも必要最小限の会話しかしない。

この距離のまま大人になっていくのかどうかはわからねぇが、目につけば気になる存在のナルトだ。


今日の任務も三班合同で畑の除草任務だ。

カカシが時間に来ないのはいつものことなので、アスマが仕切ってそれぞれの班を幾つかの畑に割り振って草むしりが始まった。

炎天下の草むしりは体力や水分が失われていく。二時間ほど経ったところで依頼者が飲み物を差し入れてくれた。

用意されたペットボトルの飲み物は11本。

遅刻してきたカカシの分が無いのではない。ナルトの分が無いのだ。


アカデミーを卒業し、任務に就いて外に出て直に感じるナルトへの風当り。

それをこの三人の上忍師達はやんわりと受け止めて、分隔てなくナルトに接する。

アスマが3本ペットボトルを手にしてオレを手招きした。

「シカマル。これ、あっちの七班の三人に持っていってやれ」

「めんどくせぇ」と言うオレにお構いなしに押し付ける。

今度は「チョウジ」と呼んで、3本渡している。渡されたチョウジは八班の方へ走って行った。そして、いのに3本。オレらの分だな。

残った2本の内、1本を紅先生に残りの1本をアスマとカカシが二人で飲むようだ。

こんなことはよくあることで、あからさまな里人達の行為にはうんざりした。

チョウジや他のみんなもわかっているので、1本足りないことを騒ぎ立てることもしない。むしろ、数が足りないことをナルトの目に触れさせないようにしていた。

それでも、オレ達の目をすり抜けて色んなことはある。ナルトが何も言わないので、結局はうやむやにされてしまう。

心に傷ばかり作るナルト。気にかかるのは同情なのか?


ハッキリ言って、ナルトのことはキライではない。かといって好きでもない。その存在が、無性に気になるだけなのだ。

一番当てはまるのは、そう、好奇心ってとこか。


そんな事を考えながら歩いていたら、七班が作業をしている畑に着いた。既に日陰に入って休憩をしている。

「おい。これ差し入れ。休憩しろってよ」

「ありがとう」

口の中で飴玉をカラカラさせながらサクラが受け取った。

「何だよ。アメ舐めてんのか」

「うん。さっき、ここの人が来て、塩分補給の飴をみんなに配って歩いてるからってくれたわよ。ね、サスケくん」

サクラから少し離れた所に座っていたサスケが「ああ」と頷いた。

「飴の袋から一人ずつ手渡しでくれたぞ。俺は舐めてないがな」

そう言ってポケットから飴を取り出して見せてくれた。赤い包み紙が両サイドでキュッと捩られている飴。

そういえば、いつも騒がしい奴がいない。

「ナルトは?」

「さっき、『トイレ〜』って走って言ったわよ」

「ふうん」

ペットボトルを開けようとしたサクラの手から持っていた飴の包み紙が離れてヒラヒラと下に落ちた。

「おい。ゴミ落とすなよ」

「ごめ〜ん」

屈んで赤い包み紙を手にした所で、ふともう一枚包み紙が落ちていることに気づく。色は赤ではなく青だ。ナルトが落としたのか?

青い包み紙・・・。

サスケとサクラが赤で、ナルトが青。

アメの包み紙の色がバラバラなのはよくあることだ。だが、何だか嫌な感じがする。

青い包み紙を手の中で握り、赤い方はサクラに渡した。そして、ペットボトルを1本手にする。

「オレもトイレ行くから、ついでにナルトに渡しといてやるよ。アイツ、休憩中にフラフラと他の班に遊びに行くかもしれねぇし」

「そ〜ね。ナルトならやりそう。じゃあ、お願いね〜」

サスケと二人きりになれて嬉しそうなサクラの声を背中に、オレは足早にトイレに向かった。

何もなければそれでいい。

収穫した野菜を保管する倉庫が有り、そこのトイレを使用させてもらっていた。近くまで行くと蛇口から激しく流れる水の音が聞こえた。それと一緒に、ガラガラと口をすすぐ音。

ナルトはトイレではなく手洗い場にいて、夢中で口をすすいでいるところだった。オレが後ろに来ていることにも気がつかない。

やっぱり、さっきの飴に何か良くない物が混じっていたのか?


「おいっ」

ビックリして振り向いたナルトの目が少し涙目になっていた。乱暴に手で濡れた口を拭う。

「なんだってばよ?」

少し声が弱々しい。

「アメ、全部舐めたのか?」

「!?」

目を見開いて驚きを隠せないナルト。その顔は、なんで?と言っているようでもある。

「舐めたのか?」

黙って首を横に振った。

詳しいことは言わないが、舐めておかしいことに気がついて吐き出したという所だろう。

「常備してる薬を飲んどけよ」

「・・・・・」

「飲んだのか?」

「・・・・・」

下を向いて何も言わない。

イラッとして、ナルトのポーチに手を伸ばそうとしたら、ビクッと体を強張らせる。その態度に、いっそうイラッとした。


そんなにオレがキライかよ!


  
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