「and(miracle,dream,happy)」シリーズ短編集

□偶然のプレゼント
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今日は9月22日。オレの17歳の誕生日だ。

朝からそのことを知っている奴らに会うと「おめでとう」を言われていた。

誕生日が嬉しい歳でもないが、これはこれで悪くない。

そういや、まだ今日はナルトに会ってねぇな。任務から帰って来ていないのか?


「シカマル〜」


噂をすれば何とやらだ。


「おう。ナルト。何だよ」


大きく手を振りながらナルトがオレの傍までやって来た。


「やっと見つけたってばよ。シカマル。今日、誕生日だろ?」

「そうだな」

「毎度のことだけどさ、ラーメンおごってやるってばよ」


ニシシと満面の笑みで笑う。

いつからだったか、ナルトは、オレの誕生日に一楽のラーメンをおごってくれるようになった。来月のナルトの誕生日には、逆にオレがナルトにおごってやるんだけどよ。


「毎年、毎年、変わりばえしねぇよな」

「なんだよ〜。シカマル。何か欲しいものあるのかよ?」


おまえが欲しい。なんて陳腐なセリフは言えるわけもなく。

ましてや、付き合ってもいねぇのによ。何考えてんだか。オレは。


「別にぃ、何もねぇな」

「だったら、いいじゃん。じゃ、一楽へ行くってばよ」

「へいへい」


まあ、オレとしては、ナルトが毎年きちんとオレの誕生日を覚えていてくれることのほうが嬉しい。

ラーメンをおごってもらった帰り、どこへ行くでもなく二人でぶらぶらと散歩する。

オレもナルトも結構、この何でもない過ごし方が好きだ。


「ナルト。おまえは誕生日に欲しい物ってないのかよ?」


毎年、ナルトに聞いている言葉。オレは消えて無くなる物じゃなく、おまえの手元に残る物を贈りたい。


「ん?ん〜。ないってばよ」


決まって、毎年、同じ答えが返ってくる。


「ふぅん。じゃあ、今年も一楽で決まりだな」

「俺はそれがいいってばよ」


おまえが喜ぶのなら、それでいいんだけどよ。記念になる何かをナルトにって、思っちまう。


「うわっ!」


靴に何かが引っかかり、つんのめりそうになった。何だ?


「シカマル?どうしたってばよ?」

「何かに引っかかったみてぇ」


「どれどれ」とナルトがしゃがんで足元の土を見る。


「あ。なんか出てる。なんだろこれ?」


オレもしゃがんで足に引っかかった物を見た。土の中に埋もれていて一部分だけが外に出ていたそれは、ボールチェーンだった。たぶん、廃棄する時に落ちたのかなんかだろう。

ナルトが物珍しげに土から出ている部分を引っ張ってボールチェーンを取ろうしている。


「ナルト。おまえ、それ取ってどうするんだよ。別に珍しくとも何ともないだろ?」

「えっ!そうなのか?俺、あんま、見たことないってばよ」

「これを?」


浴槽や洗面器の詮に付いていたり、あとは、ロールカーテンの引っ張る紐として付いていないか?


「うん」


ナルトに大きく頷かれて、ま、いいか。と思う。

「掘った方が早いってばよ?」と、何とかして引っ張り抜こうと思考を巡らしているナルトの姿がかわいらしい。

結局は引っこ抜くようだ。うんうん言いながら引っ張っている。


「抜けるか?」

「あと、もうちょいだってばよ」


「エイッ!」と力を入れて引っ張って、ドスンッと尻餅をつく。


「おいおい。大丈夫かよ」

「抜けたってばよ〜」


ナルトが嬉しそうにオレに見せた。全く、子どもだな。

それは、長さ約50センチはありそうなボールチェーン。やっぱりどこにでもありそうな普通のやつだが、金色に装飾されていた。


「すっげぇってば。キレイだってばよ〜」


ナルトが目をキラキラ輝かせて、目の前にかざす。手で泥をぬぐって、「すげぇ、すげぇ」と大喜びだ。

こんな物でなぁ…。という気持ちはあるが、ナルトが嬉しけりゃそれでいい。

すると、ナルトが何を思ったのかクナイを取り出し、それを切断しようとした。


 
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