キライだよ。

13話 キライ
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ヤマト達に言い渡された任務は広範囲に仕掛けられている国境付近のトラップの点検だった。

古くなっているものや壊されたものに新たなトラップを仕掛け直す。気を抜かせば、自分達もトラップにかかってしまうという慎重な任務だ。

里内ということもあり、敵味方双方の忍に出会うこともある。敵の場合、退治するのは言わずもがなだ。

取り掛かってから五日目に入った今日もそうで、任務に向かうのであろう忍が森の中を移動している姿が見えた。


「誰か来るってばよ」

ヤマトがちらりとそちらを見る。

「ああ、木ノ葉の者だね。トラップの場所はだいたいわかってるから大丈夫だよ」

「え! そうだってばよ?」

驚いたナルトが隣のサイに聞く。

「何? ナルト、トラップの場所、把握してないのかい?」

「そんな全部覚えてねってばよー。何だよ〜。サイ、お前は覚えてんのかよ?」

「だいたいね」

「ホントかよ〜」

ナルトが疑わしい目でサイ見れば、やれやれとサイは肩を上げた。

「君達、うるさいよ。ナルト、手が止まってる」

「うへっ。サイ、ヤマト隊長に怒られたじゃねーか」


ナルトに文句を言われたサイの視線は、ナルトを通り越し、こちらに向かって来る忍の方を見ていた。そして彼らに人差し指をさして言う。


「あれ、ナルトの友達だよね」

「へ?」


友達と言われて思わず目を凝らす。どんどん大きくなってくる姿に「あ!」と声が出た。

アスマ先生を先頭にチョウジといのが見える。

あれ? シカマルがいない。向こうも俺に気がついて、チョウジが「ナルト〜」と手を振ってきた。

見る見る間に傍までやって来たかと思うと俺達のいる所で足を止める。

アスマ先生が軽く片手を上げてヤマト隊長に挨拶をする。それにヤマト隊長がぺこりと頭を下げた。


「よう、ナルト。入院したって聞いたが、お前、もういいのか?」

「おう。大丈夫だってばよ!」

「そうか。無理するんじゃねえぞ」

アスマ先生が言い終わるのを待って、チョウジが俺に近づいて来る。

「ナルト〜。会えてよかったよ。ボク達、心配したんだからね」

「そうよぅ。慎重にやんなさいよ、あんた」

「ごめんってばよ。ところで、シカマルがいないけど、どうしたってばよ?」

「シカマルは里で用事があるから、今回の任務は別だよ」

「へえ、そうだってばよ」

「あーでも、よかった。ナルトが元気そうで。あれ? でも、少し痩せた?」


チョウジが手を伸ばしナルトに触れようとしたタイミングで「おい。行くぞ」とアスマが先を促す。

触れる手前で止まった手が「じゃあ、行くね」と振られた。


「お、おう。気をつけて行って来いってばよ」

「うん。ナルトも気をつけて。また一緒に焼き肉食べに行こうよ」

「おう」


アスマ達が去って行く後姿をナルトがじっと見送っている。そのナルトの様子をサイはさりげなく観察した。


握られた拳に力が入っているようだ。

先程、ナルトに向けて伸ばされた手に反応して強張ったに違いない。

緩く力が抜けて指が伸ばされるのと同時に、ふぅとナルトが息を吐いた。

それを確認したヤマトが「続きを始めるよ」と優しく言う。


ヤマトとサイは同じことを考えていた。


ナルトと親しい間柄の者が触れようとした手でも体を強張らせてしまうのか。

こんなことで、この先、ナルトは本当に大丈夫なのか? と。


二人共、そんなことを考えていることはおくびにも出さない。表情を変えずにナルトの様子を見つつ作業に戻った。

「あと二日で終わらせるよ」というヤマトの言葉に、「了解」と返事が二つ返ってきた。















チョウジ達を送り出して数日後、シカマルは急ぎ足で受付に向かっていた。

今日はナルトが任務から戻って来る日だ。ナルトが任務を終えて戻って来たら、休みの日にゆっくりナルトと話がしたいと思ったからだ。

自分の知らない出来事の詳細が知りたい。とりあえずすれ違いにならない為にも会う約束をしねーとな。

朝、受付で確認したら、日没頃に戻って来る予定だと言った。

「あー、くそっ。お偉方の話は好き放題言うだけでちっともまとまんねぇ」

早足で受付へと向かう。本当なら、ナルトが戻って来る頃を狙って待ち伏せしようと考えていた。それなのに、もう陽はしっかり沈んでいる。

飛び込んだ受付でナルトの班が帰還済みなことを聞き、小さく「チッ」と舌打ちする。

しょうがねぇ。帰りがてらナルトの家に寄るか。

落胆まじりで受付を出ると、「シカマル、何やってんの?」とサクラに声を掛けられた。


「別に。今帰るとこだ」

「ふーん」

サクラか…。ちょっとナルトのことを聞いてみるか。

「サクラ、お前、ナルト見なかったか?」

「ナルト? 見たわよ」

「見たのかよ!」

思わずサクラに詰め寄った。

「え、ええ。何?」

「どこで?」

「病院だけど」

「病院?」

また何かやらかしたのか、あいつ。

「師匠から異常がないか診るから検査入院しろって言われたんだって」

「は? また検査入院?」

「ほら前の、薬の誤飲の関係よ。だから今日は病院に泊まりなんだって言ってたわよ」

「はあ? なんだよ、それ」

「たぶん、検査中は会えないと思うわ。また隔離病棟だし」

またかよ。何でいちいち隔離病棟なんだよ。

「……意味わかんねぇな、それ」

「そんなこと私に言われても。シカマル、ナルトに何か用事でもあるの?」

「あ、いや。……ま、たいしたことじゃねぇけど、よ」

「ふうん」

「ところで、ナルトはどうなんだ? 元気なのか?」

サクラが思い出したようにフフッと微笑んだ。

「元気よ。元気。任務もきちんと熟したそうだから大丈夫なんじゃないかな」

「そうか」

「だから、念の為に、だと思う。あ、そうだ。ナルト、任務に出るいの達に会ったって言ってたわよ」

なんだよ。あいつらのほうが先に会ってんじゃねぇか。

「ナルトは、明日休みだよな」

「そうね」

「一日検査か?」

「んー、どうだろう? 私、この件のことは師匠から何も聞かされてないのよね」

「へえ……」

「ナルトのことだから、そのうちケロッとして現れるわよ」

「そうだな」

「そうよ。じゃあ、私、行くね」

「ああ」


何故だろう。サクラのように気楽な気持ちになれない。ナルトの顔を見ていないからか? いや、何かが引っかかる。

何が? いろいろな事が、だ。

検査入院は本当にする必要があるのか?

なぜ、隔離病棟なんだ。

隔離病棟……。外との断絶。

感染?

いや、任務に出てんだから、何かを撒き散らすわけじゃない。


……もしかして、人に会うのを制限しているのか?


それが正解か?

だが、なぜ?

どうしてそんなことを……。


くそっ。わからねぇ。

やっぱりナルトに会わなきゃならない。


2017.5.25

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