脱色短篇
□Regresion
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大柄で眼帯をしている死神と斬り合う中、俺には戦いに対する興奮とそれとは対象的な静けさがあった。
1つ、また1つと傷が増える度にアイツのことが脳裏に浮かぶ。
朧げに浮かぶアイツの笑顔が、俺の最期が近いことを悟らせる。
「俺はまだ…戦えるんだからよ…!」
最初は、あんな男勝りで可愛げの無ェ奴なんか大嫌いだった。
それが、いつの間にか『絶望』という俺が司る死の形すら忘れる程アイツと時間を共にし、アイツを愛した。
なァ、名無しさん…。
お前は、俺で良かったのか?
「クソッ…」
流れて止まらねェ血と呼応するように、アイツへの気持ちが溢れ出る。
なァ、こんなに世界って暗かったか?
こんなに、お前ェの事を想ってたのか?
何も、わからねェ。
視界が狭まり、光が無くなる。
…あァ、そうか。
俺はやっと、『絶望(オレ)』に還って来れたんだ。
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