脱色長篇
□echoes
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俺が今までに、どれだけ勝っても手に入らなかったもの。
虚として生まれ落ち、その後誰にも負けず"最強"として歩を進めてきた。
その途中で何を手に入れ、何を失くしたか。
そんなものは明白だ。
"力"を手に入れ、"心"を失くした。
虚として生きる者にとって願ってもない、宿命的な一本道。
破壊衝動に身を任せ、気に入らない者はぶっ殺し、気に入る奴は存在すらしなかった。
ふり返れば、悲しい程"孤独"に色付けられた生き様。
だが俺は後悔もしてないし、改めようとも思わない。
エゴイズム犇くこの世界に存在する以上、本物の繋がり等無いのだから。
だから俺は、本能のままに戦う。
何を失う心配等無い、失うモノが無いのだから。
俺は戦う。
斬って、斬られて、真っ赤に燃え上がるような血を見る度に"生"を感じられる。
誰の為でもない、俺が自分自身を見失わない為に。
俺は、最強でなくてはいけない。
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