novel
□ひとつ屋根の下【4】
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≪Side Yuko》
小嶋先輩から連絡が来たのは、
あの車のライト点けっぱなし事件から
約1週間程経った、ある日水曜日の事だった。
いつものように事務所で仕事をしていると、
会社のパソコンに新着メールが届いた事を知らせるポップが表示された。
・・・小嶋さんから?仕事の依頼かな?
小嶋先輩から直接依頼が来ることは今までなかったから不思議に思いながら
メールを開封した。
『お疲れ様。今週の金曜日、
仕事終わりに同期の皆で焼肉行くんだけど
良かったら大島さんも来ない?
P.S.この前はありがとう。
おかげさまでバッテリー上がらずに済みました(бвб)』
予測外の小嶋先輩からの御飯のお誘いにテンションは急上昇で、
すぐに返信メールを作成した。
車の件もなんともなくてホッとした。
「お疲れ様です。金曜日是非行きたいです。
焼肉大好物です(≧▽≦)」
正直、社内メールで顔文字を使う事に抵抗がある私だけど、
小島先輩から先に送ってくれたし、
これくらい大丈夫だよね?
なんて一人納得させて引き続き仕事に取り掛かった。
・・・その日の仕事は、自分でもびっくりする程捗った。
うん、きっと焼肉を勝手にご褒美と思って作業したおかげだね。
いつもの習慣で帰る前にメールチェックをすると、
小嶋先輩から返信が届いていた。
『良かった☆また明日時間決まったら連絡するね。
篠田さんが車出してくれると思うから、一緒に乗ってきてね。』
篠田さんは、小嶋さんと同期の先輩だ。
私も篠田さんとは同じフロアで働いてる事もあって、
休憩時間に給湯室やトイレで会うとちょっと雑談したりするような、
割と気心の知れた先輩だった。
と言っても、部署が違うから個人的にご飯行ったりするのは今度が初めてだけど。
明日篠田さんに会ったら、焼肉の件を聞いてみる事にした。
・・・よし、今日はさっさと帰ろう!
机の上をきれいに整頓するのもほどほどに、
「お先に失礼しまーす!」
・・・久しぶりに定時に帰れるという満足感と、
週末のご褒美を思うと
自然といつもより元気な挨拶になった。