novel

□ひとつ屋根の下【4】
2ページ/3ページ


会社を出る前に、

空になったマイカップを洗う為に給湯室へ立寄った。


すると、ばったり篠田先輩に会った。



「篠田さん、お疲れさまです。」


『あ、ゆっぴーお疲れさま。

今日はもう終わり?』


篠田さんがマグカップを片手に

スポンジでキュッキュと洗いながら尋ねる。

「はい、今日はなんか早く終わっちゃって。

自分でもびっくりです。」

ヘラっとした顔で答えると、

『私ももびっくりだよ。珍しい事もあるもんだ。』

って篠田さんがこっちを向いたと思ったら、

わざと驚いたような顔をされた。



思わず、


ぷっ

って笑ってしまったら、

すぐにいつもの篠田先輩に戻っちゃった。

篠田さんはポーカーフェイスで表情が読めないから、

もしかして私が笑った事で怒っちゃったのかな?

なんて内心ドキドキしてると・・・


『ゆっぴー、カップ貸して。洗ったげる。』

「あ、え!?いえいえ、大丈夫です。

自分で洗います。」

『そんな大層な事じゃないじゃん。ついでだし』


篠田の気が変わらないうちに早くっ・・・

さーん、にぃー、いち・・・。


って急かされて思わず、

「ありがとうございますっ!願いします。」

観念してカップをキッチンのシンクへと置いた。

『素直でよろしい。』

満足げに頷いた篠田さんは、

手際良くカップを洗うと、

社員のマイカップが並ぶ専用棚へ戻してくれた。

ゆっぴーとお隣さん〜♪

なんて、機嫌良さそうに自分のカップを横に並べる姿を眺めていると、

篠田さんってクールに見えるけど、

実はかなりお茶目な人だよなぁ。なんて思った。

さっき笑ってしまった件も、怒ってなさそうだし。

改めてお礼を言うと、

『ゆっぴー今日これから予定なかったら、

一緒にご飯食べて帰らない?』

送ってくよー。って篠田先輩。

ちょうどお腹も空いてきた頃だったし、

二つ返事でお誘いに乗る事にした。

ちょっとだけ、

会社に置いておく自転車の事を考えると、

明日の朝が不安だったけど・・・。


・・・まぁ、いっか。今日はまだ早いし。



明日は余裕を持って徒歩で通勤することにしよう。
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ