古の君色-イニシエノキミイロ-
□第1話
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杏「名無しさん、席自由だって」
ほら、といいながら黒板を指差す杏菜。
そこに"自由に着席"なんて書いてある。
今年担任になる先生の字なのだろうか。
『すごい緩いね…笑』
杏「この書いた人が担任だったらいいのに」
『ははっ、確かに』
そうして空いてる席に着こうと再び教室の中を見渡す。
『なんか皆適当すぎてどこが空いてるかわからないね』
杏「そうだね……んー…あっあそこ空いてる!」
『あ、いいじゃんっ』
空いてる席を見つけると前後に座った。
『杏菜またあたしの前ー?』
杏「なに!?不満!?」
『だって授業中突然後ろ向いて変な顔して笑わせてくるし』
杏「あー…そんなことあったねー笑」
『そうやって他人事みたいに…』
杏「いいじゃんいいじゃん。一番後ろの席譲ってあげたんだからさ」
『それは感謝してます笑』
すると「席に着けー」とだるそうな声と共に担任が前のドアから入ってきた。
『え、今年も担任うっちー…』
杏「うわ、ほんとだ」
明らかに嫌がる二人。
その理由は目をつけられるととことん雑用をやらされる。
本人がめんどくさがりな為、生徒に押し付けるのだ。
先「……おーい、そこのふたりー」
杏/名無しさん『「(ギクッ)」』
先「なんだ?その"嬉しそうな顔"は?」
杏「こ、今年もうっちーが担任でよ、よかったなーって思って」
『お、同じく』
そういうと一瞬ニヤッとして
「今年も"よろしく"な」と言った。
あのよろしくはおそらく…
雑用だ。
はぁ…と頭を抱えていると隣からクスクス笑い声が聞こえる。
ちらっと見ると見覚えのある顔。
『あれ、悠斗っ』
悠「お前、もうあいつに目ぇつけられてんの?」
笑いながらそう言ってくる彼。
中学三年のとき同じクラスで
仲の良かった悠斗。
あれから一年しか経っていないのにとても大人っぽくなっていた。
『うるさいなー』
悠「まぁまぁそう怒んなって」
うっちーが話しているのにも関わらず悠斗と話してHRは終わり、始業式とかいうめんどくさいのをやりに体育館へと向かった。
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