古の君色-イニシエノキミイロ-
□第11話
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ピピッピピッ
「ん…」
耳に響く目覚ましで目が覚め音を止めるとぼーっと天井を見上げた。
思い返すは昨日のこと。
なんか最近勇人のことばっかり考える気がする。
"それじゃ、いけない"
そう思ってたのにもう、あたし自身、嫌でも気づかされてしまう。
勇人のことが、好きだって。
昨日勇人に"初めて"好きだと言われた。
面と向かって初めて言葉を聞いた。
それを聞いてやっぱりあたしは嬉しかったんだ。
あたしを好きになってくれること。
"勇人が"あたしを好きになってくれたこと。
でもやっぱり昔のことを思い出してしまうのはどうしようも無くて。
でも勇人は昨日あたしが好きになれない原因である昔の彼氏の話を持ち出したんだ。
言っても無いのに。
…きっと、杏菜だろう。
勇人は「本気で嫌なら突き飛ばしてもいい」とさえあたしに言って優しく抱きしめてくれた。
このとき、もうあたしはこれ以上気持ちにごまかしがきかなくてされるがままになって。
ずるいなんて分かってる。
甘えてるなんて分かってる。
都合いいなんて分かってる。
…最低だって…分かってる。
優しい勇人の心につけ込んであたしはなにがしたいんだろう。
嫌なら…突き放せばいい。
でも、それができない。
本当に卑怯者。
でもね、それと同時に少しだけ信じてもいいかなと思ってる自分もいるんだよ。
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