失くしたモノ

□に
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目が覚めると、目の前に森がひろがっていた。
かすかだけど潮の香りもする。
海でもあるのだろうか…。


不思議な風景に驚く私。




とりあえず歩き続けると、川があった。


……もしかしての、三途の川?


渡らないと向こうまでいけないので、渋々渡ることにした。
裸足で入る。冷たくて気持ちがいい。




今更だけど、何となく“死んだ”って感覚がする。


あっちの奴らは、私がいなくなってくれて嬉しいだろうな…、まぁ、悲しむ奴なんている訳もないか…。




渡り切って、少し歩くと小屋があった。

とりあえず小屋の戸を叩いてみる。


声がして出てきたのは、お爺さんとお婆さんだった。


ーー話かけてみないと何にもわかんないから、頑張れ私。

そう自分を奮い立たせた。


「ここは、何処ですか?……黄泉の世界でしょうか?」


お婆さんが笑った。


「黄泉かぃ?そんな大層な所じゃないよ。ここは、テシラ島だよ。」


「テシラ島……。」


テシラ島って、何処?
確かに、私は死んだはず。

頭が混乱してきた。


頭を抱えて悩んでいると、お爺さんの手が私の肩の上にのった。


「あぁ、お前さんが楓か!そうじゃろぅ?」


いきなり名前を当てられて驚いた。
なんでお爺さんは名前を知っているのだろうか?
なんで?


「あぁ、お爺さんがいっていた…。」


分からないけど、お婆さんも納得してるし……。


「ささ、楓や。中にお入り。」



疑いつつも、お言葉に甘えて、中に入らせてもらうことにした。







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