ハレルヤチャンス
□高校総体
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「あ、明日香・・・。」
「やっぱり、ぽっちゃんだった!」
「何でここに?」
「約束したじゃん。私、バスケ部のマネージャーになったんだよ!」
「確かに約束したけど・・・」
「約束守ってれば、またぽっちゃんに会えると思っていたから嬉しい!」
「また会える?急に居なくなったのは、明日香だろ!?何で、何で、急に居なくなったんだよ!」
つい、感情を露わにしてしまった
明日香は一瞬、苦しそうな表情をしたけど、また笑顔で話題を変えてしまった
「今日は全国大会で対戦する可能性があるチームの視察に来たの。まさか、ぽっちゃんがいるなんて驚いた!」
冴に言えない理由があったんだなって思った
聞きたいことは沢山あるのに、聞く勇気がない
また傷つくのが怖いから
だから、これ以上聞けない
「そっかぁ。明日香のチームは全国大会に行くんだね。」
「あの〜、さえちゃん。私先に戻ってるね。」
りんちゃんが早口にそう言って、みんなのいる方に走って行ってしまった
明日香に再会して、プチパニックになっていた
周りが見えなくなって、つい、明日香と2人の世界になっていたのだ
りんちゃんともっと話したいし、もっと2人で時間を過ごしたい
でも、明日香に再会した冴の心は明らかに動揺していた
過去には、あの別れから1度も明日香に再会したことなんて無かったから
過去に戻って明日香に会うなんて
まさか、こんな気持ちになるなんて・・・
でも、冴は過去を変える為に来たんだ!
明日香に再会して、ちょっと驚いただけなんだ
何か特別な感情なんて、もうとっくの昔に消したはず
りんちゃんと出会って明日香のこと思い出すことなんて無かったし、心と頭はずっとりんちゃんでいっぱいだった
明日香のことなんて、もう忘れた
しっかり、自分自身に言い聞かせた
冴が好きなのは、りんちゃんだけなんだ
「冴も、もう戻るね。」
「ぽっちゃん待って!試合終わった後に、少しで良いから2人で話せない?」
“ドクン”って心臓がなって、キュッと掴まれるような感覚がした
明日香の声を聞くだけで、胸が苦しい
何とも思っていないなら、返事をすれば良いのに、言葉が出ないんだ
目頭が熱くなって、今にも涙がこぼれ落ちそうだった
「・・・ごめん、もうすぐ試合始まるから行くね。」
明日香の顔は見れなかったし、返事も出来なかった
冴は明日香に背を向けて、早足で皆がいる待機場所まで戻った