パロディ−parody

□個人編【眠れなかった夜(涼太ver.)】
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カチコチと時計の音が真っ暗な部屋に響き渡る

それは明らかに睡眠の妨げとなっていた

眠れないことへの焦りや深夜独特の静けさが不安を呼ぶ

どうしようもないこの不安のはけ口は幼いわたしにはわからず、気付いた時には泣き出していた

「……っく、うぅ…っ…」

部屋に響く自分の泣き声がさらに孤独を感じさせる

「…っ…りょ、た……っ…りょーたっ……」

無意識のうちに双子の兄、涼太の名前を呼んでいた

両手で涙を拭っても止まらず、どんどん溢れてくる

「…も、やだあ……っく…りょーた…っ」
「あかね…もう泣かないで?」
「っえ?!…おにい、ちゃん…?」

寂しさのあまり名前を呼ぶと、突然聞こえてきた本人の声に驚いて目から手を外した

そこには困った顔で笑う涼太がいた

「どうしたの?寝れなくなっちゃった?」
「…うん」
「もう大丈夫、オレがそばにいるよ」

やさしい手付きで涙を拭い、頭をなでてくれる

涼太に向かって手をのばすと、その手を取り握ってくれた

名前を呼んだ瞬間に現れた涼太が不思議で、まだ涙で潤む目でじっと見つめる

「ん?なーに?」
「どうして?どうしてお兄ちゃん…」
「さあ?どうしてだろう?」

おどけて見せる涼太はゆっくりと距離を縮めてくる

そして耳元に唇を寄せた

「だいすきな妹が呼んでたから」
「え…?」
「なーんてね!」

パッと離れた涼太が笑いながら髪をぐしゃぐしゃと撫でる

ぽかんとしていると布団を持ち上げられ、一瞬のうちにわたしのベッドに潜り込んできた

そのままギュッと抱き締められて間近に涼太を感じ、心の底から安心してくる

それとともに睡魔が襲ってきた

あらがう必要はなくて、素直に目を閉じる

「おやすみ、あかね」
「ん…」
「寂しくなったらいつでも呼んでね」

その声は夢の中に届いた


「……んスよね?」
「え?知らないよ?」
「えーっ?!覚えてないんスか?!」

デカい声をあげてこちらに身を乗り出してきたのは、あれから10年以上も経った涼太だ

いつからうざくまとわりつく兄になったのかため息を吐いてしまう

それにもめげず、ベッドに腰掛けるわたしの隣に移動してくる

「覚えてなくてもいいけど!今日も寝れないあかねに付き合ってるし!」
「ほんとポジティブだよね」
「寝れないって呼び出したのは誰!?」
「わたしだけど?」

こんな涼太だけど、いやこんな涼太だから気を張らないでいられる

ちょっとだけからかうようなことを言ってしまうけど、それも愛情のうちなのだ

「今日は寝るまで付き合ってよね!」
「もちろん!そのつもりでいるって」
「さすが涼太!」

どちらともなく笑いはじめ、深夜だというのに部屋はにぎやかになる

今は素直になれないときもあるけど、涼太が、お兄ちゃんが好きだから

「まずは一緒に布団に入るでしょ」
「え、狭いよ」
「狭いからいいんだって!ほらほら入って入って」
「うえー涼太デカい邪魔」
「邪魔はヒードーイー」

邪魔なんて言いながら涼太の腕の中にすっぽりと収まりに行く

その、わたしのための、わたしだけのスペースが安心できる場所だから

「りょーたー」
「なーにー?」
「だーいすきー」
「っ?!あかね?!」
「おやすみー」
「うえっ?!お、おやすみ…」

動揺した涼太を心の中で笑いながら、聞こえてくる涼太の心音に耳を傾けて目を閉じた

すぐに眠りたくない

できるだけ長く起きていたいのに起きていられないのは今も昔も変わらない

いつまでもこうしていられますように……





−*−*−*−*−*−

涼太お兄ちゃんの過去回想(笑)

お兄ちゃんはこんな感じで妹ちゃんを甘やかすだろう、ということでこうなりました

双子なので、まあこのツンデレな発言は理解しているという設定ね、ほんとしててほしいよね!w

テツヤ編もお楽しみに!




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