桜恋唄 番外編 〜その壱〜

□初夏の風を感じて
1ページ/9ページ


「おはよう、ほたる」


『総司。おはよう』



湯気の立つ勝手場。

トントンと野菜を切る手際の良い音が響いている。


今日は、ほたると朝食の当番だったんだけど……。



「随分早いね。僕、寝坊はしてないはずなんだけど」


『朝の食事当番の日ってさ。寝過ごしたらいけないって思うと何か気になって、早くに目が覚めちゃうんだよね。……あっ、総司。そっちのお鍋のお野菜、煮えてるかみてもらえる?』


「うん、分かった」



そう言ってほたるの傍らに並びお鍋の中を確認する。



「良い感じに煮えてるよ。これはお味噌汁にするの?」


『うん。あとはお味噌を入れるだけだから。お願いしても良いかな。あ、入れすぎないでね』



分かってるよ、と返事をしながら僕はほたるを見る。

着物の袖をたすき掛けにし、そこから覗く腕は細くて華奢で。

こうして見ると、ほたるはやっぱり女の子なんだなぁと思ってしまう。




次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ