桜恋唄 〜その壱〜
□第十五話
6ページ/7ページ
すると、襖の外から千鶴ちゃんの声がした。
「如月さん、お粥をお持ちしました」
すっと襖が開いてお盆を持った千鶴ちゃんが入ってくる。
「お口に合えば良いんですけど……」
『ありがとう、千鶴ちゃん。手間掛けさせちゃったね』
「いえ、そんな事ありません!気にしないで下さい!」
その横で、新八さんが声を上げる。
「うわっ、すっげー良い匂い!」
「新八。千鶴はお前が食う為に作ったんじゃねえぞ」
「わ、分かってるって……」
ちょっと拗ねた風に反論した彼に、俺はお粥を一匙掬って差し出す。
『……新八さん、一口食べる?』
「おまっ……何言ってんだよ!ほら、早く食え!」
やや慌てた様子の新八さんが、首をぶんぶんと大きく振った。
『そう?じゃ、いただきます……』
千鶴ちゃんが心配そうに此方を見ている。
『……ん、美味しい!』
「良かった……!」
千鶴ちゃんに視線を送れば、彼女は小さく手を叩いて笑った。