桜恋唄 番外編 〜その壱〜
□削り氷
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ぽつりと呟いた声が聞こえて、俺は視線を伊庭さんに移す。
彼は穏やかな瞳で、此方を見つめていた。
綺麗……?
何の事か分からず、俺は目の前の削り氷を見る。
ふわふわと盛られた削り氷に、色鮮やかな蜜が掛けられ、果物が添えられている。
ああ。何だ、これの事か。
『……うん、確かに綺麗。氷をこんな風に出来るなんて、凄いですよね』
「はい?」
『えっ?』
違うの?
『……今、伊庭さんが【綺麗】だと仰ったので……この削り氷の事を言ったんじゃないんですか?』
俺の言葉に、きょとんとしていた伊庭さんだったけれど……やがて小さく笑いながら、目を細めた。
「……そうですね、この削り氷も、確かに綺麗です」
削り氷、も……?