桜恋唄 番外編 〜その壱〜

□好きなもの
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今日はあまり風も無く、幾分寒さも和らいで過ごしやすい朝だった。

中庭に面した縁側で刀の手入れをしていた俺の元に、ひとつの足音が近付いてくる。


これは……。

この足音が誰のものであるかは、振り返らずとも分かる。



「ほたるか?」


『さすがだね、一君。大正解』



そう言うとほたるは俺の横に腰を下ろした。



『本当、マメだよね。一君は』


「己と運命を共にする刀だ。手入れを怠れば、それは即ち死に直結するからな」


『ご尤も』



するとほたるは、大きく背伸びをし、そのままごろんと後ろに寝そべった。



『ん〜っ、何かぽかぽかして気持ち良いなぁ』


「ほたる。いくら日差しがあるからと言って、此処は少し冷えるだろう。自室で休んだ方が良いのではないか」



床はひんやり冷たく、こんなところでは身体を冷やしてしまう。

そう思い声を掛けたのだが……。




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