桜恋唄 番外編 〜その壱〜
□陽炎
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「……此奴をどうするかは俺達が決める。原田、連れていけ。新八、先に広間へ戻ってろ」
新八の背中を見送り、俺も動き出す。
「ほら、行くぞ。さっさと立て」
土方さんに促され、今にもぶっ倒れちまいそうな此奴の腕を掴み部屋を出る。
廊下の角を曲がったところで、俺は足を止めた。
「おい、大丈夫か?」
『……何とかね、生きてるよ』
「全く……お前も無茶するよな。いくら潜入捜査を命じられたからって何もここまでする事ないだろ」
えへへっ……とほたるの口から小さな笑いが零れる。
そう、【桝屋の奥に隠れていた女】、それはほたるだ。
桝屋喜右衛門は長州の間者、古高俊太郎だという噂を聞きつけた新選組は、情報を得る為に敢えて手を出さずにいたのだ。