桜恋唄 〜その壱〜
□第六話
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『ん……』
どのくらいの間、眠っていたのだろう。
目を覚ました時は既に夜が更け、部屋の中は真っ暗だった。
『……そうだ、俺……!』
慌てて体を起こすと、自分がまだ着物のままでいる事に気付く。
村娘に扮して、長州の間者である桝屋喜右衛門────本名、古高俊太郎の計画を暴く事。
それが今回俺に課された任務だった。
だが予定外の展開になってしまい、あるひとつの考えが浮かんだ俺は、反対する局長らを押し切ってそれを実行。
やや強引なやり方になってしまったが、結果的に口を割る事に成功した。
『……にしても副長、容赦ないんだから』
痛む身体を擦り、苦笑い。
速やかに着替えを済ませた俺は、恐らく誰かしらいるであろう広間へと向かった。