桜恋唄 〜その壱〜
□第十三話
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日が完全に沈んだ頃。
不意に、屯所が騒がしくなった。
「何か、あったのかな……?」
暫く待ってみたけれど、騒ぎが収まる様子はない。
「……広間なら、誰かいるよね」
いても立ってもいられなくて、私は部屋を抜け出す事にした。
「……まさか山南君が、自ら薬に手を出すとはな……」
「なるべく山南さんの動きに注意してろって言ったじゃねえか!」
広間から聞こえてきたのは、苦渋に満ちた重たい声音だ。
「あの……?」
私は広間の隅っこから、恐る恐る皆に声を掛けた。
でも……。
皆はそれどころじゃないようで、私の存在を気にも止めてくれない。