桜恋唄 〜その壱〜

□第十四話
1ページ/9ページ


────そして、長い夜が明けた。


新選組の幹部達は再び広間に集合した。

ただ沈黙だけが続く時間を破ってくれたのは、井上さんの登場だった。



「────峠は越えたようだよ」



張り詰めていた場の空気を、その言葉が暖めてくれる。



「今はまだ寝てる。 ……静かなもんだ」


「山南さん、狂っちまってるのかい?」



永倉さんがそう問うと、井上さんは首を横に振った。



「……確かな事は起きるまで分からないな。見た目には、昨日までと変わらないんだが」



その時、不意に戸が開いた。



「おはようございます、皆さん」



うげ、と皆が思い切り嫌そうな顔をする。



「あら、顔色が優れませんのね。……昨晩の騒ぎと何か関係ありまして?」



参謀と呼ばれるだけあって、伊東さんの発言はさすがに鋭い。




次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ