桜恋唄 〜その壱〜

□第十六話
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「如月さん、雪村です。起きていらっしゃいますか?」


『おはよう、千鶴ちゃん。起きてるよ。入って』



ここ数日間返ってこなかった声が、耳に届く。

それが嬉しくて、つい笑みが零れた。



「失礼します。……おはようございます」



私は襖を開き、中に入る。

如月さんは、布団から身を起こし此方に身体を向けていた。



『……まさか、監察方の俺が、千鶴ちゃんに監視される日が来るとはね』


「えっ、如月さん、どうしてそれを……。あっ……!」



私は慌てて口を塞ぐ。

だが、如月さんは既にお見通しのようだ。



『どうせ、副長辺りに頼まれたんだろ?もー、これ以上休んでたら身体が鈍っちゃうよ。俺ってそんなに信用ないかなぁ』


「み、皆さん、如月さんの事凄く心配してました!だから……」


『……分かってるよ。ありがとう、千鶴ちゃん』



そう言って浮かべた如月さんの笑顔はとても優しくて。

如月さんは、どうやらこれもちゃんと見抜いていたみたい。




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