桜恋唄 〜その壱〜
□第十八話
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「……やっと、此方を見てくれましたね」
ぱっと顔を上げた俺に、総長はにこりと微笑む。
「君は恐らく、責任を感じているのでしょう。私がこうなったのは、自分のせいだ……と」
『……っ………』
「ですが、それは違います。先程も言ったように、これは私が、決めた事なのです。……分かりますね?」
『はい……』
「……如月君、此方に来なさい」
総長の手が、ぐっと俺を引き寄せる。
それとは逆の手がそっと頭の上に乗せられた。
「良いですか、君は何も引け目を感じる事はない。いや……寧ろ私は、君に感謝すらしている。再び、この腕で剣が握れるのですから」
『はい……ありがとうございます……』
「さあ、もう戻って休みなさい。明日も早いのでしょう?あなたは忙しい人ですからね」
『……では、また来ます。総長、おやすみなさい』
「ええ、おやすみなさい」
俺は、もう一度だけ振り返り、前川邸を後にした。
その足取りは先程までとは違い、その背を月明かりが照らしていた。
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