桜恋唄 〜その壱〜

□第三話
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「ふぅ……」



部屋に戻るなり、小さな溜め息が零れる。



『疲れたでしょ。少し休んでて』


「あ、はい……。ありがとうございます」



ぎこちなく笑みを浮かべるが、つい顔を伏せてしまう私。



『……皆あんなだけどさ、理不尽な事は絶対にしない。不安にならないで……、なんて無理な話だろうけど、少なくとも、局長の言ってたようにむやみやたらに殺したりはしないよ』


「はい……」



それきり沈黙が続く。


互いに言葉を発する事もなく、暫く経った頃、それを先に破ったのは如月さんだった。



『言いたい事、』


「え?」


『……あるんじゃないの?』



そう言って笑った顔がひどく優しくて、不覚にも私はドキッとしてしまった。



『……あれ、ちょっと顔赤い?昨日寒かったしね。もしかして風邪引いちゃった?』


「いっ、いえ、大丈夫です!!何でもありません!」



私はブンブンと首を振る。


吸い込まれそうなくらい、綺麗な瞳だと思った。

まるで宝石みたいに。




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