桜恋唄 番外編 〜その壱〜
□曙
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『……あれ、総司?おはよ』
珍しく太陽が昇る前に目を覚ました僕。
何となく二度寝する気にはなれず、顔を洗おうと井戸へ向かう。
どうやら先客が居たようだ。
朝靄に包まれた人影がぼんやりと浮かび上がった。
徐々に確認出来る相手の姿。
あれは……。
「おはよう、ほたる。随分早いじゃない。まだ夜明け前だよ」
……やっぱりね、僕の思った通りだ。
『総司こそ。体調、大丈夫なの?もう少しゆっくりしてたら良いのに』
「大丈夫、心配ないよ。それよりほたるは?もしかしてまたこれから外に行くの?」
『ううん、今日はまだ出ないよ。何だか目が覚めちゃってさ……だからって二度寝したら起きれなくなっちゃいそうだし、しょうがなく布団を片付けたってわけ』
ん、でも総司に会えたからいっか、そう言ってほたるは無邪気に笑った。
『あっ……総司、見て……』
ほたるの顔が向けられた方向に、僕も視線を移す。
東の空が徐々に明るくなり、ゆっくりと太陽がその姿を現す。
『うわぁ……綺麗………』
「うん。本当、綺麗だね」