桜恋唄 番外編 〜その壱〜
□心配
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「……ほたる?」
『…………』
ぱっと目を逸らしたかと思うと、ほたるはそのままくるりと後ろを向いてしまった。
「ねえ、どうし────」
『────俺は、怖かったよ……』
【どうしたの?】
そう尋ねようとした僕の言葉は、僅かに震えたほたるの声によって遮られる。
「ほたる?」
もう一度、彼女の名を呼ぶ。
僕を振り返った彼女の瞳は、濡れていた。
『……池田屋に着いた時、そこはもう、凄い状態だった。その先で、倒れている総司を目にして……息をしてなかったらどうしよう、手遅れだったらどうしよう、って内心すごく焦ってた』
「…………」
『今こうして総司が……総司が、生きていてくれて、本当に良かった……』