桜恋唄 〜その壱〜

□第一話
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文久三年十二月────。


朝から雪の降る寒い日だった。

任務から戻った俺は、灯りの灯る一室の前にいた。



『副長、如月です』


「入れ」


『失礼します』



襖に手を掛けると同時に、室内へ冷たい冷気が流れ込む。



『只今戻りました』


「ご苦労。しかし今日は随分と冷えるな……ってお前、ずぶ濡れじゃねえか。それくらい拭いてから来たってバチは当たらねえよ。風邪引くぞ」



呆れ返った声に顔を上げ、苦笑い。

すると急に手が伸びてきて、副長の指先が軽く睫毛に触れた。



「此処にも雪、積もってる。……変わらねえな、お前は」



その視線はひどく優しくて、何だか気恥ずかしくなった俺はつい目を逸らしてしまう。



「ほら、使え」



そう言って副長は手拭いを差し出した。



『すみません』



おずおずと受け取り、雪で濡れた身体を拭く。




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