桜恋唄 〜その壱〜
□第一話
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「どうした、平助。そんなに慌てて、何かあったのか」
「まずい事になった!前川邸の奴らが……逃げ出した!!」
「何だと……!?」
前川邸の奴ら────彼奴らが、京の町に……!?
冗談じゃない、何やってるんだよ!
『副長っ……!』
「ちっ……平助、状況はどうなってる」
「巡察に出てなかった幹部で追ってる。山南さんが、残りの奴らが全員いるか前川邸に確認に行ってくれてるはずだ」
「そうか。面倒な事になったな……」
「早いとこ見つけ出さねえと!オレも行ってくる!」
「ああ、頼んだぞ」
言うが早いか、平助は暗い廊下を走り去って行った。
『俺も一緒に────』
「ほたる」
その背を追うべく体の向きを変えながら立ち上がろうとした刹那、副長に呼び止められる。
「ほたる、お前は俺についてこい。良いな」
『……はい』