桜恋唄 〜その壱〜
□第二話
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「わ、私……、誰にも言いませんから!」
必死に主張するも、新選組の人達は苦い顔したまま。
助けてあげたいけど、しょうがないから殺すしかない……。
そういう感じなんだと思う。
「けどよ、こればっかりは大義の為に内密にしなきゃなんねえ事なんだろ?新選組の隊士は血に狂ってるなんて噂が立ちゃあ、俺らの隊務にだって支障が出るぜ」
新選組の隊士は血に狂う……?
血に狂う……。
永倉さんの言葉を聞いて、ふと父様との会話を思い出した。
「何を研究してるの?父様」
「これはな、千鶴。落若水というものだ。これを飲んだ者は大きな力を得て羅刹という存在になる」
「ら、せつ……?」
「そうだ。羅刹はとても力が強いからね。きっと皆の役に立つ。だがもっと研究しなくては駄目だ。今の羅刹は血に狂ってしまう。まだまだ完成には程遠い……」
記憶の糸を辿っていた私を引き戻したのは山南さんだった。
「……副長の意見を、伺いたいのですが?」
役職名で促された土方さんは小さく息を吐き出した。
そして少し思案した風な表情を見せ、何か考えているように見えた。