桜恋唄 〜その壱〜

□第四話
4ページ/6ページ


状況は一転。

首筋に刃筋を突き付けられていたのは千鶴ちゃんの方だった。



「師を誇れ。お前の剣には曇りがない」



一瞬の間に何が起きたのか分からない様子の千鶴ちゃんは、呆然としたまま動かない。

漸く自分の手元から小太刀が弾かれていた事に気付いた彼女は、そのまま固まってしまった。



『びっくりした?一君の居合いは達人級だからね』


「落ち込む事はないと思うが。お前は外を連れ歩くに不便を感じない腕だ」



すると総司がパチパチと手を叩く。



「一君のお墨付きかぁ。これってかなり凄い事だよ?」


『副長には俺達から進言しておくよ。って言っても今は大坂へ出張行っちゃってるし、もう少し待ってもらう事になるけど……。ごめんね』


「あ……如月さんが謝る事じゃないです。だから、気にしないで下さい」



ふと空を仰ぎ見る。

灰色の雲が途切れて、そこには鮮やかな晴れ間が、覗いていた。




次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ