桜恋唄 〜その壱〜
□第四話
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状況は一転。
首筋に刃筋を突き付けられていたのは千鶴ちゃんの方だった。
「師を誇れ。お前の剣には曇りがない」
一瞬の間に何が起きたのか分からない様子の千鶴ちゃんは、呆然としたまま動かない。
漸く自分の手元から小太刀が弾かれていた事に気付いた彼女は、そのまま固まってしまった。
『びっくりした?一君の居合いは達人級だからね』
「落ち込む事はないと思うが。お前は外を連れ歩くに不便を感じない腕だ」
すると総司がパチパチと手を叩く。
「一君のお墨付きかぁ。これってかなり凄い事だよ?」
『副長には俺達から進言しておくよ。って言っても今は大坂へ出張行っちゃってるし、もう少し待ってもらう事になるけど……。ごめんね』
「あ……如月さんが謝る事じゃないです。だから、気にしないで下さい」
ふと空を仰ぎ見る。
灰色の雲が途切れて、そこには鮮やかな晴れ間が、覗いていた。