桜恋唄 〜その壱〜
□第四話
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────その晩。
いつもの様に広間では晩飯の強奪戦が始まった。
ぎゃあぎゃあと騒いでるのは勿論、平助と新八さん。
俺はと言うと、なるべく火の粉が降りかからないよう総司の横で膳をとっていた。
………が。
「何だ、総司もほたるも、全然減ってねえじゃねえか!その魚、俺がもらってやるよ!」
……見つかった。
『はいはい、分かったよ。これは新八さんにあげる。あ、でも総司の分は取らないでよ?』
「別に構わないよ。僕はお酒をちびちびしてれば良いし」
『駄目だって。それは総司が食べなきゃ……って、新八さん?俺の話聞いてた?』
「あん?何か言ったか?」
端から魚の尻尾がはみ出たまま、もぐもぐと口を動かす新八さん。
思わず溜め息が零れたのは、言うまでもない。
『もう!総司は食が細すぎる。ちゃんと食べないと、倒れるよ?』
「ほたるは心配性なんだよ。しかも変に頑固でさ。そういうところ、誰かさんそっくり」
『副長は関係ないだろ!』
「え、ほたる。土方さんの事そんな風に思ってたの?僕は一言も【土方さん】なんて言ってないのに」
そう言って総司は悪戯な笑顔を浮かべた。