桜恋唄 〜その壱〜

□第五話
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◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

『へえ、お兄さんも長州の生まれなん?どの辺?』



とある昼下がり。

お客さんと他愛ない話をしながら、時間が過ぎていく。



「わしは鹿野の方じゃ。お主は何処やね?」


『うちは周防。知っとる?』


「おう、知っちょる知っちょる。あの辺りは海も山も川も近うて住みやすいところじゃろ」


『ええ、ほんまに』



くすくすと笑いながら、相槌を打つ。

……その時、何やら通りの方が騒がしくなった。



「何や煩いなぁ」


『喧嘩でも始まったんやろか』



表に出ようとしたところを、ひょいと引き戻される。



「お前は中におり。……坊っちゃん、そこの坊っちゃんも、巻き込まれんよううちの店へ入りや」



「え?……あ、あの、もしかして桝屋さんですか?……」



店主と話すその声を耳にした瞬間、嫌な予感が掠める。

それが外れる事を祈りつつ、恐る恐る振り返ると、同時に客のうちの一人が声を上げた。



「き、喜右衛門さん!そのガキ、さっきまで新選組の沖田と一緒にいたぜ!?」


「なっ!?」


「新選組だと!?逃げろ!」



お店にいた客までもが逃げ惑い、そこに、浅葱色した羽織を着た人物が飛び込んでくる。



「あーあ、君って本当に運がないよねぇ。ある意味此奴らも、僕も、だけど」



予感的中。

目の前で、大捕り物が、始まった。




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