桜恋唄 〜その壱〜

□第五話
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『っ……』



古高はなかなか口を割らない。

そこに新八が、店の奥に隠れていたという女を連れて入ってきた。



「おい、さっさと吐きやがれ。でないとてめえの命はねえぞ」



『やからっ……。何言われても知らんもんは知らん。離してや!』


「じゃあ何故お前のような女が桝屋を出入りしている?」


『薬を買うのにお金が必要やったんやもん!けど京に来たからって仕事なんか簡単に見つかるもんやない。困っとったところを助けてもろうただけっちゃ!やからうちはっ……』


「もう良い。仮にそれが本当だったとしても、お前を返すわけには行かねえ。恨むなら、亭主を恨むんだな。おい原田。桶に水、張って持ってこい」


「あいよ」



少しすると原田が戻ってきた。

俺は原田から桶を受け取ると、女の前に突き付ける。


女はきっと睨みをきかせ、脅しにも折れる様子はない。

首根っこを掴むと、俺はそのまま桶の中にぶちこんだ。



『っ……けほっけほっ……』



ゆっくり顔を引き上げれば、苦しそうにむせる女。

今にも飛びそうな意識を必死に繋ぎ止め、俺を仰ぎ見る。



「最後にもう一度だけ聞いてやる。話すか、話さねえか」


『うちは……、何も知らん……』


「……そうか。だったら容赦はしねえ。せいぜいあの世で悔やむこったな」



俺は吐き捨てると、腰の刀に手を添えた。




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