桜恋唄 〜その壱〜
□第八話
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新選組は緊張状態で夜を明かす事になる。
────そして。
明け方の空に、砲声が響き渡る。
遠くの町中から争う人々の声が聞こえる。
同時に隊士達は、互いに顔を見合わせると頷き合った。
……皆が駆け出そうとしたその時。
「待たんか、新選組!我々は待機を命じられているのだぞ!?」
会津のお役人が横槍を入れてきた。
………………。
行軍の最中、副長はあまり怒らなかった。
寧ろ声を荒げる役は新八さん達に任せて、お役人相手に辛抱強い説得を繰り返した。
だけど……。
ついに我慢の限界が来たのだと思う。
「てめえらは待機する為に待機してんのか?御所を守る為に待機してたんじゃねえのか!長州の野郎共が攻め込んできたら援軍に行く為の待機だろうが!」
「し、しかし出動命令は、まだ……」
お役人の言い訳を半ばまでも聞かず、副長はぴしゃりと言い放った。
「自分の仕事に一欠片でも誇りがあるなら、てめえらも待機だ云々言わずに動きやがれ!」
「ぬ……!」
副長は彼らの返答を待たず、風を切るように歩み始めた。