桜恋唄 〜その壱〜
□第九話
2ページ/8ページ
「その羽織は新選組だな。相変わらず野暮な風体をしている」
揶揄うような言葉に、隊士達の怒気が益々高まった。
「あの夜も池田屋に乗り込んできたかと思えば、今日もまた戦場で手柄探しとは……田舎侍にはまだ餌が足りんと見える。……いや、貴様らは【侍】ですらなかったな」
「……お前が池田屋にいた凄腕とやらか。しかし、随分と安い挑発をするもんだな」
副長は厳しい眼差しを向けたまま、凍り付くような冷笑を浮かべていた。
────まさか、こんな所で会うなんて。
その様子を黙って見ていた俺は、副長の横に並び出るとまっすぐ前を見据え、彼と向き合った。