桜恋唄 〜その壱〜
□第九話
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刃先を突き付けられたまま、暫し睨み合う事、数秒間。
永遠とも取れるその間、少しでも動けば間違いなく殺されるだろう。
……一瞬、彼の視線が後方に向けられる。
息苦しい程に張り詰めた空気を破ったのは、風間さんの方だった。
「────貴様」
そう言い掛けた彼は僅かに口角を上げ、刀を下ろした。
彼の真意を量るべく、まっすぐにその瞳を見つめる。
すると、ふっと笑みを浮かべながら此方を見据え、口を開いた。
「実に面白い……。気に入ったぞ」
『……それは誉め言葉と受け取って宜しいのでしょうか』
「好きにしろ。────しかし、【腕だけは確かな百姓集団】と聞いていたが、この有様を見るにそれも作り話だったようだな。……池田屋に来ていたあの男、沖田と言ったか 。あれも剣客と呼ぶには非力な男だった」
副長はその言葉に瞳を細めて、ぎり、と奥歯を噛み締めた。