桜恋唄 〜その壱〜

□第十一話
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元治二年二月────。



「お茶が入りました」


『あ、千鶴ちゃんありがとう』



ある日の朝食後。

俺達は広間で話し合いをしていた。


千鶴ちゃんが、お盆に載せた大量のお茶を、一人ひとりに手渡していく。



『はぁ〜……。あったかい。やっぱり寒い日は熱めのお茶が美味しいね』



そう声を掛ければ、ありがとうございます、と千鶴ちゃんが笑う。


そんな時、副長がぽつりと呟いた。



「八木さん達にも世話になったが、そろそろこの屯所も手狭になってきたか」


「まあ、確かに狭くなってきたなぁ。隊士の数も増えてきたし……」



新八さんがしみじみと言う。



『隊士の数は、多分まだまだ増えるよね……。平助も江戸に出張までして新隊士の募集を呼び掛けてるわけだしさ』



隊士が増えるのは良い事なのだが、屯所の広さにも限りがある。


そして特に割りを食ってるのは、小部屋を集団で使う平隊士の奴らだ。

彼らは毎晩、寿司詰め状態での雑魚寝を強いられている。



「広い所に移れるなら、それが良いんだけどな。雑魚寝してる連中、かなり辛そうだしな」


「だけど僕達新選組を受け入れてくれる場所なんて、何か心当たりでもあるんですか?」



軽い口調で総司が尋ねると、副長は薄く笑って返答した。



「西本願寺」




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