桜恋唄 〜その壱〜

□第十三話
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「……部屋を出て行ったのには気付いてた。けど、薬を飲むとは思わねえだろ、普通?変なもん持ってたようには見えなかったが、薬を管理してたのはあの人だもんな……」



苛立たしげに、永倉さんは声を荒げた。



「自分が使う量くらいなら、簡単に用意出来たって事か」



原田さんは、ぽつりと零すように言う。



「確かにあの薬を使えば、腕の治る可能性もあるんだろうが……。あれは失敗作なんだろ?飲んだ連中も皆、血に狂っちまった」



漸く話に理解が追い付いてきた。


新選組が抱えた秘密の【薬】────。

それを、山南さんが飲んでしまったらしい。



「山南総長は独自に薬の改良を続けていたと聞きます。理性を保ったまま腕を完治させる。その成功に、賭けたのでしょうが」



斎藤さんは淡々とした声色で、近藤さん達に説明している。



「────失敗を悟った山南総長は、ほたるの制止も聞かず自刃に臨んだ、と」




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