お話

□無くしたものは
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『お前に光は必要ないよ』

絶望を映した目を覗きこんで言った。

更に深い絶望へと追いやるように。



僕と彼が出会ったのは青峰のおかげだと言っても過言ではない。

儚げな彼の様子に、一瞬で目を奪われた。

陳腐な表現であるが、確かに、彼に運命を感じた。

“勝つことは絶対”

そんな当たり前のことも、いつしか変わっていった。

“彼のために勝つ”

それが当たり前になった。

笑顔を見たい。
もっと。

けれども。

青峰と拳を合わせる彼を。
緑間に小言を言われている彼を。
黄瀬に抱きつかれている彼を。
紫原に頭を撫でられている彼を。

見ていられなくなった。

僕の前で笑っていればそれで良かった。

だから。

開花していくチームメイトに。

段々笑わなくなった彼に。

僕は喜びを感じた。



「赤司くん…僕は…皆で笑ってバスケがしたいです」

「テツヤ…?」

辛そうな顔で。
けれども僕だけを映す瞳に。
目を奪われた。

「僕は…一人じゃ何もできません。でも…皆を少しでも助けたかった…」

「テツヤ…お前に光は必要ないよ」

「え…?」

「彼らにも…影は必要じゃない」

大きな瞳が潤む。
必死で悲しみを圧し殺そうとするテツヤが、可愛くて。
愛しくて。

「帝光の理念はわかってるだろう?」

「っ……」

テツヤのいう“光”と。
笑い合いたいなんて。

僕以外を見ることは許せない。

それくらいなら

いっそ





「退部する?」

「はい。お世話になりました」

「そうか…わかった」

「赤司くん」

「なんだい?」

「ありがとうございました」

表情を無くした彼は、力を振り絞るようにして言葉を発した。

笑みを浮かべる僕に、頭を下げた彼は、気づくことはなかった。



無くしたものは


彼の笑顔。

僕の理性。




再び出会った彼は、笑顔を取り戻していた。





end




思ったよりヤンデレにならなかったです…。

でも表情が無い黒子っち=赤司さまの策略
っていうお話が書きたかったので
まあ…
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