ロケット団復活!

□パンドラの箱は閉まらない
1ページ/4ページ




『……様、サカ…様…!!』


地面に泣き崩れるアポロを前に、手を伸ばしても触れることすら出来ない。


『泣かないで下さい、兄様…!』

『嘘だ…ロケット団が、解散だなんて…!!』


狂ったように叫んでいる兄を、次は抱き締めようと試みた。


『……………。』


やはり手がすり抜けた。だんだんと半透明になっていくのは、自分ではなく兄の方。
周りに気配を感じて見回すと、アテナやラムダ、ランスも次々に消えていく。


『…え?どうして消えちゃうんですか!?兄さ…!』


3人と同様にパズルのピースの如く、バラバラになって消えていくアポロ。
慌てて手を伸ばすも掴むことは叶わず、地面に開いた穴へと吸い込まれる。


『きゃあぁぁぁぁっっ!!?』


視界から光がなくなる中で見えたのは、ピカチュウを連れて笑みを浮かべる少年だった。

























「………さ…エルナさん!!」

「っ!?」



気が付いた時に目の前にいたのは、焦った顔で自分の体を揺するランスだった。
肩で呼吸をしながら震える手を伸ばし、そっと彼の頬に触れてみる。


「……さわ、れた…。」

「は…?」

「良かった…っ!」


ズルリと手がランスの腕まで落ち、エルナは彼の服をギュッと握り締めた。


「あ、あの…エルナさん…!?」

「………っ!!」

「…怖い夢でも見たんですか?」

「……………。」


俯き小さく頷いたエルナの手は、しっかりと彼の黒い服を掴んでいる。
どうすべきか悩むランスだが、彼女を起こして背中に腕を回した。


「…どんな夢だったかは知りませんが、私は幽霊じゃありませんよ。」

「いなくなったり、しないですよね…?」

「ありえません。」


キッパリと答えるランスに安心したのか、ホッと安堵の息を吐くエルナ。
まだ抱き締めたままの腕に力を入れて、ランスは背中をポンポンと叩いてやった。



「…エルナー?あたくし、お粥を作った…んだけ、ど……。」



ガチャリと開いたドアの向こうに、お粥を持ったアテナがポカンと突っ立っていた。


「…ごめんなさい、お邪魔だったかしら?」

「な!?あ、アテナさ…何言ってるんですか!?というか、ノックして下さい!!」

「したじゃない。どうしてランスが慌ててるの。」


パッとエルナから体を離したランスは、真っ赤な顔でまくし立てる。
呆れつつもアテナはエルナに視線を移し、体の調子はどう?と訊ねた。


「だいぶ顔色は良くなったわね。」

「はい、おかげで楽になりました。ありがとうございます。」

「いいのよ!病気なのに働きづめ、逃亡劇と続いちゃあね…。お粥食べれる?」

「頂きます。」


熱いからと渡されたお粥をスプーンですくい、エルナはそっと口の中に入れる。


「熱っ!」

「だから言ったじゃないの。ゆっくり冷ますのよ。」

「ずいぶんと猫舌ですね…。」

「昔っからそうだったじゃない、エルナは。」



ああ、そうだと思い出す。かなり昔の、まだ自分たちが子供だった頃。
アテナの隣のイスに腰掛けながら、ランスは物思いにふけっていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ