妖精達の日常

□空には星が瞬いた
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エルザ:「――…。」
ここはフィオーレ王国最強のギルド、フェアリーテイル。
ギルドのベランダに立つこの女、妖精女王の異名を持つフェアリーテイル最強の女魔導師、エルザ・スカーレット。
今日は7月7日。
下ではいつもの賑やかなメンバー達が、七夕飾りを作って盛り上がっているのだが…。
ミラ:「エルザ、そんなところで何してるの?
風邪引いちゃうわよ?」
エルザの姿が見えないことに気がついたミラジェーンが、2階にエルザを探しに来たようだ。
エルザ:「あぁ、すまない。
少し…、考え事をしていただけだ。」
ミラの方へと振り向き返事をした後、エルザは再び星空を見上げた。
ミラ:「…天の川が綺麗ね。」
エルザ:「…そうだな。」
それっきり会話が途切れ、沈黙が訪れる。
どれくらい時間がたったのか…、しばらくして口を開いたのはエルザの方だった。
エルザ:「今頃、織姫と彦星はあの天の川の上で会っているんだろうな。」
エルザの声が何だか寂しげに聞こえて、ミラは何も答えられない。
だが、そんなことはまるで気にせずエルザは話続けた。
エルザ:「少し…、織姫と彦星が羨ましくなってな。」
そう呟いて、自嘲したように微笑む。
エルザ:「一年にたった一度だとしても、愛する人に必ず会えるのだから…。」
ミラ:「エルザ…。」
エルザの"愛する人"など、当てはまる者は1人しか居ない。
かつて己が犯してしまった罪に苛まれ、未だに自身を責め続けている青い髪の青年、ジェラール。
彼は今、"魔女の罪"の一員として、評議院から姿を隠しつつ各地を飛び回っているため、会いたくてもどこに居るか。
いや、生きているかすらわからないのだから。
エルザ:「――…つまらない話をしてすまない。
風が出てきたな…、そろそろ中に入るか。」
そう言って中に入ろうとしたエルザの後ろ姿にミラが声をかけた。
ミラ:「エルザ。」
エルザ:「なんだ?」
怪訝そうに振り返った彼女を、ミラは優しく抱き締めた。
ミラ:「羨ましがることなんか、ないと思うわ。」
エルザ:「――…え?」
ミラ:「だってジェラールはきっと、エルザに1年も会えないなんて耐えられないでしょ?」
「だから、1年経っちゃう前に会いに来ると思うわ。」
そう言って優しく微笑むミラは、正に女神のようで。
先程までの強がりが崩れたエルザの瞳からは、透明な雫が溢れた。

短冊には書いてないけれど、もしも願いが叶うのならば…。

―空には星が瞬いた―

『今すぐ貴方に会いたい。』
そんなエルザの願いを受け止めるかのように、空には星が瞬いた。
→オマケ
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