二万感謝企画

□31.
1ページ/1ページ



響く、響く、反響する。僕を縛った悪夢が嗤う。白い白い、真白な地獄が、どこまで逃げても追い掛けて、手を伸ばして、纏わり付いてくる。そうして、僕に呼び掛けるのだ。

一しばらくは自由をあげる。
 けど次は、逃がさない。

どこに逃げても、掌で耳を塞いでも、目を隠しても。どんなに愛しい君の腕の中でも、白は僕を覆い尽くし、今か今か、と隙を狙って蠢いている。簡単に呑まれてしまいそうな程の、白。僕の汚した黒の、赤の世界は、こんなにも小さく、脆弱なものであったのだろうか。

「雲雀君、僕、怖いんです」
「…何が」

白が、なにもかもをいとも簡単に呑みこめてしまう程の絶大な力を持った、あの白が。僕をきっと呑み下し、僕を消してしまうであろう、あの白が怖い。ざわめき蠢く白が耳に障る。五月蝿い、煩い、五月蝿い一。


ノイズが反響する。
白い毒が僕を蝕み、支配する。


何故、気付かなかったのだろうか。最早、僕に自由などというものはなかったのに。精神も身体もあの男に堕ちてしまったのだ。たとえ、心が否定しようとも。なんて愚かで無力な人間なのだろうか、僕は。

唯一、唯一残された僕の自由。あの男にこれ以上堕とされ、白に汚されることなく在る為に、僕は愛しい君にどうか、と願おう。僕のココロに君が在る、今の内に。

「雲雀君、どうか僕を殺して」

ノイズが、近付く白い手がぴたりと止む。白い鎖が朽ちて逝く。雲雀君は一瞬瞠目したけれど、すぐに凜とした笑みで向き直り、君は僕の物だ、と言ってくれた。こんなに白に犯されても、僕は、雲雀君の物なのだ。逆さに揺れる白を基調にした部屋を嘲笑ってやった。僕は、雲雀君の物なのだ、と。


【ノイズ】


(僕は白に狂ったりはしない)
(黒に狂い死ぬのだから。)



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ