二万感謝企画

□33.
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本当はあの背中を追い掛けたかったよ。日増しに小さく潰れていく様な、本当は優しくて温かい壬晴の背中を抱きしめてやりたかった。正直言ってしまうなら、あのまま追い掛けて私も一緒に灰狼衆でも何処でも付いていきたかった。

私もいっぱいいっぱい苦しんだけど、気付かなかったけど、雷光の優しさが、ずっと私を包んでた。風魔の奴らもいたし、私は大丈夫だった。だけど壬晴は、いきなり引き込まれて、秘密、慾、策略の渦に飲み込まれて、息も出来なくなってしまった。

いきなり狙われる立場に置かれて、縋りたい先生は何かを隠して、虹一は人を簡単に殺めて、私は森羅万象を利用しようとした。灰狼衆は服部の為に、慾の為に壬晴を狙う。唯一の肉親には心配もかけたくない。

その、ぐらぐらの壬晴を救ったのが、私じゃなく、宵風。死神みたいな奴、に、私のポジションは奪われた。ううん、最初に森羅万象を餌にしようなんて考えた時点で、私は退場させられてたんだ。

そんな退場した私にも、壬晴は笑い掛けて、心配してくれて、友達だって言ってくれた。そんな壬晴が私は大好きで。壬晴にはずっとずっとずっと笑ってて欲しい、そう思ったんだ。


一雷鳴には関係ない。


その言葉は、きっと私の罪への、罰。とうとう、私は壬晴の世界から除外されたのだ。なのに私はその罰を受け入れたくはなかった。壬晴と私を繋ぐ唯一の物はもう、隠の世、だけだから。私は壬晴が望むなら宵風の為だろうが、壬晴の為だろうが、森羅万象を否定なんて出来ないんだ。

先生は、壬晴の森羅万象である事実を否定した。戸隠の首領、織田八重が言っていた。壬晴は、本当は『愛して欲しい』と願っている、と。それが本当ならば、森羅万象が目覚めた事で、壬晴が求められた事が苦しみの中で、支えになっていたとしたら。その森羅万象を否定された壬晴はどんな気持ちだったんだろう。

先生は、壬晴が森羅万象を使うなら殺す、とまで言った。虹一の心は私にもわからなくなってきた。そんな萬天に壬晴はもう戻って来ないだろう、と思う。

灰狼衆で何かあったら今度こそ、壬晴は行き場を失うだろう。その時は、私は壬晴の最後の居場所で、砦でありたい、そう思う。きっと壬晴はどうあっても最後には泣いてしまう気がする。でもいつか私の隣で笑ってくれたらそれでいい。だから、今は。


【バイバイ】


(壬晴の為なら私は何だってやるよ)



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